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2018/05/29

ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている

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間違った「定説」が誤った解釈を生み、世界を見えにくくさせる

政治家や外交官、官僚、研究者ら地政学の専門家たちにも広まっている「定説」は、インターネット上に限らず、新聞や雑誌、本においても、いくらでも見つけることができる。

たいていの「定説」は事実から生まれるが間違いも多く、それが誤った解釈を生み、私たちが世界を正しく理解することを妨げているのだ。

なぜ、それらは間違っているのか?
その裏には、いったいどのような事実が隠されているのか?


今回は、リベラルアーツシリーズ『最新世界情勢講義50』から、トピックを厳選して紹介したい。
世界の本当の姿を知る、
あるいは、賢い情報の扱い方・疑い方を考える機会としていただければ幸いだ。

連載一覧(順次公開)

▶ 専門家に聞いても国際情勢は理解できない
▶ 「オバマがアメリカを弱くした」という批判は見当違いである
▶ ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている
▶ テロは脅威だが、重大視し過ぎてはいけない
▶ 本に書いてあることが正しいとは限らない

よくある思い込み

2016年のアメリカ大統領選挙運動中、共和党候補ドナルド・トランプは「Make America great again(アメリカを再び偉大に)」をスローガンとし、アメリカの経済と戦略に活力を取り戻したいという野心をあらわにした。

ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている

ドナルド・トランプは、前任者バラク・オバマが2期にわたる任期中にアメリカを弱体化させたと非難した。数々の外交問題でアメリカが後退したとし、
競合・敵対する他の大国に毅然と対応しなかったことが遺憾だとしている。
トランプの主張によれば、アメリカは再び世界のリーダーになれるし、ならなくてはいけない。
多国間の調整を重視することも、アメリカの国益に反する国際問題への関与も、一切無用だというのだ。

トランプの振る舞いはバラク・オバマのそれとはまったく違うものの、根底には同じ認識がある。
つまり、もはやアメリカだけで国際問題への取り組みや世界の舵取りをしているのではないという認識だ。
しかし、その認識から、オバマが多国間主義路線で世界とさらに関わっていくべきだと結論したのに対し、トランプは逆に、強硬かつ奔放な単独行動主義への回帰をもくろんでいる。

問題は、意欲さえあればそれができるというわけではないことだ。
ドナルド・トランプが好むと好まざるとにかかわらず、西洋、ことにアメリカが力を独占する時代はもう終わった。
その時代がまだ続いているかのように振る舞うのは不可能だし、危険でさえある。

問題は、意欲さえあればそれができるというわけではないことだ。
ドナルド・トランプが好むと好まざるとにかかわらず、西洋、ことにアメリカが力を独占する時代はもう終わった。
その時代がまだ続いているかのように振る舞うのは不可能だし、危険でさえある。

当選後のトランプの外交政策は、予測不能という印象を与える。
NATOからも日本と韓国との同盟からも距離を置く、ロシアと歩み寄る、といった選挙期間中の公約の数々を、彼は当選後に見直した。
中国からアメリカへの輸入品に対する45パーセント程度の課税も、断念した。
アメリカ経済の競争力を削いでマイナスの影響を与えかねないと考えたからだ。

メキシコ国境の壁の建設と、イスラム教徒のアメリカへの入国制限に関しては、トランプ大統領は考えを曲げていない。
彼がグローバリゼーションを批判するいっぽうで、意外にも中国の習近平国家主席がそれに対抗し、2017年のダボス会議でグローバリゼーションを擁護した。

アメリカと北朝鮮の挑発合戦や、イランとサウジアラビアの対立では、トランプが火に油を注いだと見られている。
すでに巨額だったアメリカの軍事費(年額約6000億ドル)を、トランプは10パーセント増大させた。
彼が地球温暖化に関するパリ協定から離脱したことで、アメリカは世界の中で孤立している。

この大統領の政治は予測不能で危険だと、最も近しい同盟国からも見られている。


アメリカ経済は(オバマ政権時代にすでに始まっていた)世界的な経済の回復のおかげで好調だとしても、トランプ大統領の挑発的手法と豹変ぶりによって、アメリカのイメージと信頼性は損なわれている。
そのせいで、彼が任期を終えるときには、当選時よりもアメリカの力が弱まっているおそれが大きいのである。

『最新世界情勢講義50』 Lecture 22:ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている(pp.124-126)

Copyright (c) of the original French language edition 2017, seventh edition, Armand Colin, Malakoff.
ARMAND-COLIN is a trademark of DUNOD Editeur - 11, rue Paul Bert - 92240 MALAKOFF

最新 世界情勢講義50

著者:パスカル・ボニファス
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN:978-4-7993-2265-9

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4799322656
D21サイト:http://www.d21.co.jp/shop/isbn9784799322659


【連載一覧】(順次公開)

▶ 専門家に聞いても国際情勢は理解できない
▶ 「オバマがアメリカを弱くした」という批判は見当違いである
▶ ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている
▶ テロは脅威だが、重大視し過ぎてはいけない
▶ 本に書いてあることが正しいとは限らない

カテゴリ

社会科学

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