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2018/05/24

専門家に聞いても国際情勢は理解できない

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間違った「定説」が誤った解釈を生み、世界を見えにくくさせる

政治家や外交官、官僚、研究者ら地政学の専門家たちにも広まっている「定説」は、インターネット上に限らず、新聞や雑誌、本においても、いくらでも見つけることができる。

たいていの「定説」は事実から生まれるが間違いも多く、それが誤った解釈を生み、私たちが世界を正しく理解することを妨げているのだ。

なぜ、それらは間違っているのか?
その裏には、いったいどのような事実が隠されているのか?


今回は、リベラルアーツシリーズ『最新世界情勢講義50』から、トピックを厳選して紹介したい。
世界の本当の姿を知る、
あるいは、賢い情報の扱い方・疑い方を考える機会としていただければ幸いだ。

連載一覧(順次公開)

▶ 専門家に聞いても国際情勢は理解できない
▶ 「オバマがアメリカを弱くした」という批判は見当違いである
▶ ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている
▶ テロは脅威だが、重大視し過ぎてはいけない
▶ 本に書いてあることが正しいとは限らない

よくある思い込み

専門家はそれぞれの分野について、揺るぎない知識を長年積み重ねてきた。
何でも屋であることの多いジャーナリストとは逆に、専門家は明確な対象に特化している。
特定の分野の知識を代表し、学術的な見解を示す。

一般の人々にとって、専門家という肩書は、真摯さと客観性を保証してくれる。

専門家に聞いても国際情勢は理解できない

いったい、国際関係のように微妙で重要なテーマに関して、客観的で中立的であることは可能だろうか?
いや、そんなことはあり得ない!

専門家はそのテーマについて深い知識を培ってきたかもしれないが、だからと言って客観的だとは限らない。
専門性は、中立性の前提とはならないからだ。

専門家も、自身の経歴、出自、行動範囲などに応じて、さまざまな影響を受け得る。
専門家に期待できるのは、せいぜい真摯な学術的視点と、たとえ個人的な考え方でも、論理的思考に沿って意見を表明する力だろう。

ところが、専門家の学識があれば、主観性は(なくなりはしないが)最小限に抑えられると、一般には考えられているのである。

問題が込み入ってくるのは、専門家がただ箔をつけて世論を誤った方向へ導くためだけに、存在しない学位や架空の役職をでっち上げる
(あるいは偉そうだが名ばかりで実体のない肩書を組織に要求する)場合だ。

つまり、私たちの目の前で情報操作が行なわれるのである。
そのような専門家は真の客観性や学術性を欠いた視点を持ち、自らの個人的な信条から、あるいは単に自らの収入源を得たいという目的で、個人や国家の利益のために発言する。

そうした事例は数多あるが、なかでも特筆すべきなのは、イラク戦争開戦前に同国の大量破壊兵器保持を「専門家」たちが断定したことだ。
事実ではなかったにもかかわらず、世論はそれを開戦の正当な理由とみなした。

この事実が物語るのは、人々の思考を啓発するのではなく、誘導する働きをする専門家がいるということだ。
世論を啓発するどころか欺こうとする「えせ知識人」には注意しなくてはいけない。

それでは、たとえばテロ事件があった際、捜査の情報を何も知らないのに、テレビ局のスタジオに駆けつけてコメントする「専門家」たちを、私たちはどう考えればいいのだろう?

彼らにとっては好都合なことに、「言葉はいずれ消える」。
けれども、彼らは情報とメディアが信頼性を失うのに手を貸し、陰謀論に間接的に加担しているのである。

噓つきと陰謀論者は、1枚の硬貨の裏と表のようなものだ。情報網が発達した結果、資質も人格も玉石混淆の専門家が登場している。
その言説に整合性があるかどうかを知るには、私たち自身が冷静に分析するしかない。


『最新世界情勢講義50』 Lecture 02:専門家に聞いても国際情勢は理解できない(pp.20-22)

Copyright (c) of the original French language edition 2017, seventh edition, Armand Colin, Malakoff.
ARMAND-COLIN is a trademark of DUNOD Editeur - 11, rue Paul Bert - 92240 MALAKOFF

最新 世界情勢講義50

著者:パスカル・ボニファス
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN:978-4-7993-2265-9

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4799322656
D21サイト:http://www.d21.co.jp/shop/isbn9784799322659


【連載一覧】(順次公開)

▶ 専門家に聞いても国際情勢は理解できない
▶ 「オバマがアメリカを弱くした」という批判は見当違いである
▶ ドナルド・トランプこそがアメリカを弱体化させている
▶ テロは脅威だが、重大視し過ぎてはいけない
▶ 本に書いてあることが正しいとは限らない

カテゴリ

社会科学

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