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2018/03/27

人工知能が発達したのちの世界は、ディストピアではない!

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人はAIとどのように共存していけばいいのか?

「人工知能(AI)によって仕事が奪われる」と言われるようになりました。
第四次産業革命とも称されるこのような“変化の時代”を生き抜くために、私たち、そして未来を生きる子どもたちは何を身につけていけば良いのでしょうか?
また、社会はどのように変わっていくのでしょうか?

本記事では2回にわたって、そのヒントとなる内容をご提供します。

連載一覧

第1回 AIによって仕事の形が変化する中で、私たちは何を身に付けるべきなのか。
第2回 人工知能が発達したのちの世界は、ディストピアではない!

はじめに

前回の記事では、人工知能の発達によって多くの人が職を失っていく中で身につけていくべき能力について考えていきました。
人工知能に取って代わられないためには、「Creativity」「Social skill」の二つが重要であり、これらの力があれば人工知能が労働を担う時代においても仕事を失わないでいられる、というのがその結論です。

しかし今回は、もう少し手前側の問題、「そもそも人工知能の発達によって仕事を失うことは悪いことなのか?」という点について考えてみようと思います。

  1. 人工知能を恐れるべきなのか?
  2. 人工知能によって失われるのは、「自動化」できる業務だけ?
  3. 人工知能の発達によって多くの人々が失業したのちは?
  4. 「新しいことを考え、幸せを追い求める」のがこれからの人間

人工知能を恐れるべきなのか?

例えば、現在自動車の自動運転の技術がかなり開発されてきており、10年以内には広く実用化されるのではないかと言われています。
自動運転が一般的になれば、タクシーやバスの運転手、トラックのドライバーなどは失業します。

このように技術の発達による失業は単なる想像の範を超え、実際のものとなりつつあるのです。

それでは、我々人間は人工知能を「人間から仕事を奪うもの」として恐れるべきなのでしょうか?


必ずしもそうではないでしょう。

人工知能も、元はといえば人間がより生きやすくなるために開発したテクノロジーの一つです。

例えば、現在自動車の自動運転の技術がかなり開発されてきており、10年以内には広く実用化されるのではないかと言われています。
自動運転が一般的になれば、タクシーやバスの運転手、トラックのドライバーなどは失業します。
確かに、自動運転の技術はドライバーの仕事を奪うという観点では脅威かもしれません。
一方で、実用レベルにまで達した人工知能による運転であれば、不注意による交通事故は起こらないはずです。
全ての自動車が自動運転となった世界では交通事故はほとんど起こらず、人間はより安全に暮らせます。

(余談ですが、2018年3月に、自動運転中の自動車が死亡事故を起こしたニュースがありました。
しかし、だからといって”一つの事故が起こったから自動運転が良くない”という主張は短絡的です。
自動運転車の方が、人間の運転よりも安全である証拠はありませんが、不注意で起こっていた事故の多くは、センサーと画像処理技術によって解決されるはずです。)

これは一例にすぎませんが、人工知能というテクノロジーの発展をうまく活用していけば得られる恩恵はとても多く、決して人工知能を「脅威」としてのみ捉えるべきではないでしょう。

人工知能によって失われるのは、「自動化」できる業務だけ?

上で述べてきたような「自動化」できる職業は、遅かれ早かれいつかは機械にとって変わられるということは予測できます。

それでは「知性」が必要だと思われている仕事はどうでしょうか。


例えば、企業の採用担当は人工知能に代わられるかもしれません。
今までにその企業で良い働きをした人のデータを取り、それを人工知能に分析させ、その結果と近い人間を採用するというやり方は、すでに検討され始めています。
実際、2017年には、ソフトバンク株式会社でIBM Watsonを使った選考が行われました。

また、裁判官の仕事も、将来的に人工知能が担うかもしれません。
今までの多くの判例をデータとして学習させれば、人工知能でも人間の裁判官と同じように、もっと言えば人間の裁判官よりも正しい判決を下すことができるのではないかと、現在開発が進められています。
▶ "判例研究への質的比較分析(QCA)の応用の可能性"(森 大輔)
COMPAS


このように、今までの多くの事例を把握し、それを踏まえて新しい最適解を選び取るといった知性を必要とする仕事も、いずれは人工知能によって代替可能なのです。
もはや人間に残される職業なんてなくなってしまうのではないか、とも思えてきてしまいます。

人工知能の発達によって多くの人々が失業したのちは?

人工知能によって失業する人が出始めた時点では、まだ仕事を続けられている人と、職を失った人で格差が生まれてしまうでしょう。

一方で、どんどんと失業者が増え人口の半分ほどが失業してしまうような状況になったらどうでしょうか。
仕事に就けない人間は多くいる一方で、人工知能のおかげで生産力は下がっていない。
収入がないため消費をできない人間が増える一方で、自動化によって物はどんどんと生産されていく。

おそらく、「ベーシックインカム」の制度が導入されるだろう、というのが現在広く言われています。


国が国民全員に無条件で毎月一定額のお金を支給するというのが、「ベーシックインカム」制度です。
非現実的なように思われる制度ですが、スイスでベーシックインカム制度の導入の是非を問う国民投票が行われたり、フィンランドで一部の失業者を対象に実験的にベーシックインカムの支払いを開始したりと、すでに世界で導入が検討され始めている制度です。

ベーシックインカム制度の導入について検討するとき、必ずぶつかるのが「財源」の問題です。
例えば、日本の2018年度予算における社会保障費は100兆円弱で、これを国民全員に平等に配ると6~7万円になります。
東京のような都市では月に6〜7万円では生活することは難しいでしょう。今現在の状況では、この制度は導入してもあまり効果は生まれないでしょう。


しかし、人工知能とロボットが多くの労働を担う時代になれば、この制度は実現可能です。

経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏は、その著書『仕事消滅—AIの時代を生き抜くために私たちにできること』(鈴木貴博著・講談社)において、
「人類が働かなくても経済がきちんとまわる、ある意味でのユートピア」のような世界を創る方法がある
と述べています。

まず全ての人工知能とロボットの利用権を国有化します。
そしてそのロボットの働きに応じてロボットに給料を支払います。
そしてその給料を全て国民に分配します。

こうすれば、財源の心配なくベーシックインカムの制度を導入でき、人が働かなくとも経済は回るようになるのです。


労働は義務であり、労働の対価としての収入で生きていくという考え方は、変わっていく可能性があるということです。
人工知能の発達によって人間が不幸になる「ディストピア」的世界になってしまうというイメージは必ずしも正しいものではありません。
人工知能というテクノロジーが発達する中で社会の構造を柔軟に変えていくことが、今後求められていくでしょう。

「新しいことを考え、幸せを追い求める」のがこれからの人間

人工知能が労働を担い、人間に労働力が求められないというこれからの時代は、歴史を振り返るとギリシア時代と似ているかもしれません。

ギリシア時代は生活のための労働は全て奴隷に任せ、ギリシア市民は哲学や天文学について考えたり、芸術活動をしたり、政治の議論をしたりすることにその時間の全てを費やしていました。
このおかげでギリシアは驚異的な発展を遂げ、民主主義、ユークリッド幾何学、地球球体説など、様々な発明や発見がなされました。


これからの時代の人間も同じように、より新しいことを見つけ出すために思考することが一番の仕事になるのかもしれません。
また、「労働」が生きがいの中心ではなくなった人々は、「仕事に代わる新しい生きがいとは何か」「人間はどうしたらもっと幸福に生きることができるか」、といった議題について多く論じるようになるでしょう。


「人工知能によって失業する」と言えば、ネガティブなイメージがつきまといます。
しかし「人工知能が労働を担ってくれる」と考えれば、ポジティブなイメージに変わります。

労働を人工知能に任せることによって、人間は今よりもずっとたくさんの新しいアイディアを思いつき、新たな可能性を切り開いていくかもしれません。
また自分の幸福を追求することに持つ時間全てをかけることができるようになるかもしれません。

人工知能が発達するこれからの未来は、人工知能にはない人間だけの能力を磨くことと、テクノロジーとうまく付き合い社会や概念を柔軟に変化させていくことの二つが求められていくでしょう。


こうしてきたるべき時代を見据えて行動していけば、私たちに待っているのは「ディストピア」ではなく、「ユートピア」なのではないでしょうか。

(文責:溜舞花)

◀第1回 AIによって仕事の形が変化する中で、私たちは何を身に付けるべきなのか。

人工知能時代を生き抜く子どもの育て方

著者:神野元基
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN:978-4-7993-2061-7

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