DISCOVER 21 LEBERAL ARTS COLLEGE

世界が変わる、世界を変える

search
open
 >   > AIによって仕事の形が変化する中で、私たちは何を身に付けるべきなのか。
2018/03/26

AIによって仕事の形が変化する中で、私たちは何を身に付けるべきなのか。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人はAIとどのように共存していけばいいのか?

「人工知能(AI)によって仕事が奪われる」と言われるようになりました。
第四次産業革命とも称されるこのような“変化の時代”を生き抜くために、私たち、そして未来を生きる子どもたちは何を身につけていけば良いのでしょうか?
また、社会はどのように変わっていくのでしょうか?

本記事では2回にわたって、そのヒントとなる内容をご提供します。

連載一覧

第1回 AIによって仕事の形が変化する中で、私たちは何を身に付けるべきなのか。
第2回 人工知能が発達したのちの世界は、ディストピアではない!

はじめに

将来、私たちの仕事は部分的に無くなるでしょう。
その事実と向き合い、生き抜くためには、新しい仕事に就くこと、新しい仕事を生み出すことが必要です。
そして、その実現のために、私たちにはCreativityとSocial skillを養うことが不可欠なのです。

本当にAIに仕事が奪われる?

AIと言えば、一昨年から昨年にかけて「東ロボくん」が世間を賑わせました。

東ロボくんは、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトで開発されたAIです。
大学入試を題材として、人間だけが獲得できるとされるスキルや専門的能力について、その真偽を明らかにすべく開発が行われました。


…結果から言うと、2016年秋に研究開発を一度断念することとなり、東大合格も実現できませんでした。

しかし、センター試験模試では、同じ大学入試を受けた50万人の学生の中で
上位20%以内の成績を収め
● 日本の6割以上の大学に合格できる(※模試結果)
という結果を示しました。
(TEDで公開されている新井紀子氏の講演より)

“文を読んだり理解できない”AIが、将来ホワイトカラーとなる学生の大部分よりも優れた結果を出してしまったのです。
そのため、AIの発展が喜ばれる反面、多くのメディアでAIによって人の仕事が無くなるのではないかと騒がれています。

仕事が安定してくると、サービスの均一化や業務の効率化を目的として、仕事内容がマニュアル化されることがほとんどです。
マニュアル化されると、プロセスが明確になるため、多くはプログラムの形で表現することができ、仕事をAIや機械に移行することができます。
結果、人員削減が可能になり、その結果リストラが起きます。

例えば、運送業やサービス業、翻訳家などはリストラによって、多くの人が仕事を失うと言われています。
AIに仕事を奪われた人々は、何もしなければそのまま労働市場から脱落することになるのです。


そのような”人工知能時代”を生き抜くために、私たちは何をすればいいのでしょうか?
また、子どもたちに何を伝え、教えていけばいいのでしょうか?

  1. ―将来の仕事はどうなる?
  2. 将来のために私たちは何をすべきなのか

―将来の仕事はどうなる?

主張1:将来、仕事はなくなる!

第四次産業革命によって、私たちの仕事は変わっていきます。
では、仕事環境はどのように変わり、どんな仕事が大きな影響を受けるのでしょうか。

将来の仕事を取り巻く環境とは?

神野元基氏は『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、今の子どもたちが大人になる頃には、以下のような状況になると予想しています。

・小さい時から夢見てきた仕事が無くなる
・学歴があるだけでは働き口が見つからない状況になる
・指示を受けないと働けない人材は即刻クビになる
・コンピューターが扱えないことは、読み書きができないことに等しくなる

現在の社会でもすでにこの傾向がみられています。
この私たちの仕事を取り巻く環境の変化は、さらに加速していくでしょう。
そして、その変化に応じて、私たちの仕事の多くがAIに引き継がれていくのです。

では、具体的にどのような仕事が無くなると予想されているのでしょうか?

将来、自動化される仕事とは?

カール・ベネディクト・フライ氏は、702の職業について、近い将来に仕事の何%が自動化されるかを分析し、ランキング形式で示しています。
"THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?"

分析によると、10~20年のうちに70%以上が自動化される仕事は、全体の47%。つまり330ほどの職業のほとんどがコンピューターの仕事になるのです。
その中でも、運送や物流に関連する仕事やサービス業は大半が消滅すると予測されています。
他にもいくつか例を挙げると、翻訳家は99%、警備員は84%、フライトアテンダントは75%が自動化されます。

逆に、研究者やセラピスト、ソーシャルワーカーなどは、ほとんど自動化されることはなく、今後も残っていく職業だと言えます。

主張2:AIによって仕事がなくなることはない!

これまでも産業革命によって、仕事を取り巻く環境は大きく変化してきました。
にもかかわらず、私たちの仕事はなぜ無くならないのでしょうか。

それには以下のような理由があります。

なぜ仕事は無くならないのか?

米ボストン大学の経済学者ジェームズ・ベッセン氏は、AIによって仕事は無くならないと主張しています。
"HOW COMPUTER AUTOMATION AFFECTS OCCUPATIONS: TECHNOLOGY, JOBS, AND SKILLS"

みなさんもご存じの通り、ATMが導入され、現金の入出金業務が自動化されました。
それによって、銀行店員の仕事も人数も減ったと思うでしょう。

しかし、事実は違いました。
なんと、2000年以降のデータでは、店員の人数は年間で2%増加していたのです。

これは、
①ATMにより店員の負担が減った分、他の業務が増えたこと
②一つの支店の運営人数を減らし、支店数を増やしたこと
で、全体として店員増加につながったのです。

また、ATMに限らず、コンピューターを積極的に導入した業務ほど、人数も賃金も年間1.7%増えています。
つまり、需要がある限り、部分的な業務の自動化は、仕事を減らすどころか、増やすのです。

デイヴィッド・オート氏は、仕事が無くならない根拠として、基本的な経済学原理が関わっていると主張しています。
"Why Are There Still So Many Jobs? The History and Future of Workplace Automation"
その原理とは 「Not get enough(満足を知らない欲深さ)原理」です。

<Not get enough(満足を知らない欲深さ)原理>

仕事の自動化により使える時間が増え、テクノロジーの進歩によって、可能なことの範囲が広がり、新しい製品・アイデア・ サービスが生み出され、それが私たちの関心を引き、消費を促すようになりました。
くだらないとも思えるものも増えたかもしれません…無限プチプチとか(笑)。
でも人々はそういったものを欲しがり、夢中になってしまいます。


人間の尽きることのない創意と果てなき欲求のため、私たちは決して満ち足りることがありません。

そういったところに、常に新たな仕事があるのです。

―将来のために私たちは何をすべきなのか

これまでに紹介してきた主張から、現状維持ではなく、新しいものを生み出すことが、これからの時代に不可欠になることが分かります。
では、私たちは何を身に付けておけばいいのでしょうか。

将来のためにどんな能力を鍛えるべきなのか?

カール・ベネディクト・フライ氏によると、「今後労働市場で生き残っていくためには、高いCreativityとSocial skillが必要」になります。


Creativityとは、「新しいアイデアやものを作り上げる能力」のことです。
なにか新しいアイデアを生み出すには複数の一般的なアイデアを、今までにない方法で組み合わせることが必要になります。
つまり、優れたアイデアを生み出せるかどうかは、そのきっかけになるような知識の引き出しをいくつ自分の中に持っているかで決まるのです。

Social skillというのは「他人と交渉したり、他人を説得したりする能力」、いわゆるコミュニケーション能力のことをいいます。
現在、電通がAIコピーライターのAICOを開発するなど、AIにアイデアを生み出させる試みも進んでいますが、アイデアには新規性に加え、価値を持つことが重要であるため、自動化は非常に難しいのです。


また、東ロボくんを作った新井紀子氏によると、東ロボくんが東大受験を断念した理由は読解力の欠如であると述べています。
というのも現在のAIは、言葉を文字列としてしか認識できないため、文章の読解や理解ができないのです。

例えば、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)では以下の問題例が挙げられています。
******************************************************************************
次の会話の空欄に入れるのに最も最適なものを、それぞれ①~④のうちから一つずつ選べ。
Nate: We're almost at the bookstore. We just have to walk for another few minutes.
Sunil: Wait. (    )
Nate: Oh,thank you. That always happens.
Sunil: Didn't you tie your shoe just five minutes ago?
Nate: Yes, I did. But I'll tie it more carefully this time.

① We walked for a long time.
② We're almost there.
③ Your shoes look expensive.
④ Your shoelace is untied.

(訳)
ネイト もうすぐ本屋だよ。あと2,3分かな。
スニール ちょっと。(    )
ネイト サンキュー。よくあるんだよね。
スニール 5分前に結んでなかったっけ?
ネイト だね。今度はしっかり結んどくよ。

①随分歩いたね ② もうすぐだね  ③いい靴だね ④ 靴の紐ほどけてるよ
******************************************************************************
私たちであれば、正解が④であることは、容易に理解できますが、AIは②を選んでしまうのです。

私たちが普通にできる意味理解は、AIに欠如している部分です。
しかし、多くの人は理解せずにただ知識を詰め込んでいます。
それは知識ではなくただの暗記で、 AIでもできることなのです。
そのため、私たちは新しいタイプの教育、“丸暗記から意味の理解へ”転換する必要があります。


これらのことから、今後労働市場で生き残っていくためには、CreativityとSocial skillを教養として身に付けることが重要です。

私たちは、そして将来の当事者である子どもたちは、AIとどう向き合うのか?

AIによって自動化された仕事によって、多くのリストラが発生します。
仕事は無くならないという意見においても、やはりこの事実は避けられません。
では、どうすればいいのでしょうか。

雇用数を維持するという前提に立てば、答えは一つです。
仕事を失った人は、新たな仕事に就くしかありません。
そのためには、私たち自身はもちろん、未来を担う今の子どもたちは、Creativity、Social skillを身に付けることが必要です。

そして、テクノロジーの進歩を活用して新しい仕事を生み出す、また、そうして生み出された仕事に必要なスキルを身に付けることが不可欠なのです。

私たちが生きる社会は、今後どのように変わっていくのでしょうか?

本記事では、第四次産業革命によって部分的に仕事が無くなるため、新しい仕事を生み出し、活用していくためのスキルを身に付けることが大切だと述べてきました。
しかし、人工知能によって労働の構造そのものが変わる可能性もあります。

そのため、第二回では、人工知能が発達すると社会はどのように変わっていくのかということを紐解いていきます。

(文責:曽我部立樹)

▶第2回 人工知能が発達したのちの世界は、ディストピアではない!

人工知能時代を生き抜く子どもの育て方

著者:神野元基
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN:978-4-7993-2061-7

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4799320610/
D21サイト:http://www.d21.co.jp/shop/isbn9784799320617

カテゴリ

応用科学

関連記事

世の中を動かす「戦略PR」とは?

ビジネスやマーケティングの現場で起こっている「戦い」 現在、数えきれないほどの商品が世に放たれては消えています。商品やブランドのキャッチコピー、ネットの動画やパンフレット、テレビCM―わたしたちは一日の中で、一体どれほどの情報を目にしているか、ご存知でしょうか?梅澤伸嘉氏著『ヒット商品打率』(同文館出版)によると、わたしたちはなんと、一日に4000を超える広告メッセージを浴びています。情報も商品も...

人工知能が発達したのちの世界は、ディストピアではない!

人はAIとどのように共存していけばいいのか? 「人工知能(AI)によって仕事が奪われる」と言われるようになりました。第四次産業革命とも称されるこのような“変化の時代”を生き抜くために、私たち、そして未来を生きる子どもたちは何を身につけていけば良いのでしょうか?また、社会はどのように変わっていくのでしょうか?本記事では2回にわたって、そのヒントとなる内容をご提供します。 連載一覧 第1回 AIによっ...

あなたは大丈夫?正しい情報を読み取る方法

平成29年度版情報通信白書によるとインターネットの人口普及率は83.5%、インターネットのある生活が当たり前になってきた。一方で、その活用の仕方については十分に理解されておらず、結果、スマホ中毒やネット依存、ネットいじめなどが蔓延している。インターネットの使い方について改めて見直さなければならない時代となった。そこで今回は情報の扱い方について、明治大学情報コミュニケーション学専攻教授・江下雅之先生...

来たるべきタイミングを図る

ここまでの連載で、テクノロジーの視点から経済や社会のシステムを考えることの重要性を述べてきました。 しかし、テクノロジーが新しく、最先端であるほど良いかというと、必ずしもそうではありません。なぜなら、ある技術の価値は、時間と共に大きく変わってしまうからです。当時の社会には必要とならない技術であったり、古い技術になってしまったり、理由は様々ですが、来るべきタイミングで社会に提供しなければ、それは「無...

合理化の罠

近年、AIを使ったシステムが注目されています。特にDeep Learningは一つのブームになっていて、大手企業がシステムを無料公開したり、東大で企業向けの授業や演習内容の公開を行うなど、一般の人も手が出しやすい状況になってきました。 しかし、新しいシステムの導入は、いい面と悪い面があることを理解した上で使う必要があります。今回は、『時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法』で紹介されて...

テクノロジーは人間の敵なのか?

―AI技術が進むと、人間の職が失われる!?―ロボットの自動化が進むと、労働者の仕事が取って代わられる!? AI技術が目まぐるしく向上していることから、ロボットやAIと人間(労働者)の対立という構図で語られることが増えてきました。 背景には、イノベーションのスピードが上がり、テクノロジーが影響を及ぼす範囲が産業から社会、そして個々人へ移ってきていることにあります。そのため、数年前から、イノベーション...

Facebook