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2018/03/14

あなたは大丈夫?正しい情報を読み取る方法

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平成29年度版情報通信白書によるとインターネットの人口普及率は83.5%、インターネットのある生活が当たり前になってきた。
一方で、その活用の仕方については十分に理解されておらず、結果、スマホ中毒やネット依存、ネットいじめなどが蔓延している。
インターネットの使い方について改めて見直さなければならない時代となった。

そこで今回は情報の扱い方について、明治大学情報コミュニケーション学専攻教授・江下雅之先生にお話を伺った。

  1. どんな情報もストックされる
  2. 物事を系統的に勉強する時間が足りていない
  3. 人は信じたいことを信じてしまう
  4. 古典作品をじっくりと読むのがいい
  5. インターネットは情報の宝庫
  6. おわりに

どんな情報もストックされる

冒頭で述べた通り、現代はインターネットが生活に浸透している。
情報が拡散しやすい環境になり、それが正しいか、間違っているかはあまり重要視されなくなった。

”情報が拡散するようになった要因としては、もともと様々な情報をネタとして使う行動が広がりつつある中で、モバイル環境が急速に拡充したことが考えられます。
さらに現代では、細かな情報や小さな声などが届きやすく、また、ストックされやすくなった反面、情報を回収することがほぼ不可能となり、ささいなことも見逃してもらえず、忘れてほしいことも忘れてもらうことが難しくなりました。”

Twitterでツイートが炎上してしまったからと言って焦って削除したとしても、誰かがその投稿を保存していれば“完全に”消すことはできない。
以前は、「人の噂も七十五日」という諺にもあるように、人の記憶から徐々に消えていく可能性があった。
けれども、今は情報が保存され、ストックされるため、完全に情報を消すことができる可能性はゼロに等しい。

物事を系統的に勉強する時間が足りていない

情報環境が整った一方で、正しい情報も誤った情報もストックされることにより情報量が膨大になった。
そして、誰もが情報を精査することに重点を置くことが難しくなった。
大抵の人はその情報が本当に正しいかどうかというよりも、それと同一の情報がどれだけ回っているかなどに左右されがちだ。
「情報に騙されたことは一度もない」と断言できる人はほとんどいないのではないだろうか。

”今の大学生は、物事を系統的にじっくりと勉強する時間が圧倒的に足りていないと感じます。
これは私が大学生の時も然り、あらゆる時代で言われてきたことではないでしょうか。
こういうことは大学生のうちにある程度のトレーニングが必要なので、大人でもこのトレーニングをしきれなかった人はいるのではないかと思います。”

と長年大学生を見てきた先生は語る。

人は信じたいことを信じてしまう

”どんなに注意していても、どれほど経験値を積んでいても、騙されることもあれば勘違いすることもある、という意識を頭の中に入れておく必要があります。
とりわけ、人は信じたいことを信じるものなので、認知バイアス・確証バイアスには頭のどこかで注意しておかなければなりません。”

情報環境が整い便利になった一方で、自分が得た情報をいかに疑うことができるかが問われる時代となった。
一見正しそうな情報であっても、バイアスがかかっていることがある。
2017年の世界の報道自由度ランキングによると、日本は180ヵ国中72位であり、「テレビや新聞といった日本のマスメディアから発信される情報はかなりのバイアスがかかっている」と『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』で述べられている。

安倍首相の裁量労働制を巡るデータの不適切な引用は、手元にある情報を疑わなかったことにより問題となった一例だろう。
2018年1月29日の答弁で首相は「裁量労働制で働く人の労働時間は平均で一般の労働者より短いというデータもある」と述べていたが、一般労働者と裁量労働制で働く人への調査方法が異なっていたという事実が判明した。
働き方改革関連法案に「裁量労働制」を盛り込みたいあまり、データを恣意的に読んでしまった可能性がある。

自分が信じていることを疑うというのは、誰であっても難しい。

古典作品をじっくりと読むのがいい

自分が得た情報を批判的に受け止める土台として、『徒然草』や『風姿花伝』などの古典として評価される文学作品をじっくり読むことが重要だという。

”インターネットでさまざまな情報を得ようとするよりも、古典作品を何度もじっくりと読むほうがためになると思います。
時代を超えて評価されるというのはそれだけの価値があるということです。
何度も繰り返し読み頭に沁み込ませることで、後々情報の落とし穴に気づくきっかけとなります。”

古典は、時代の中で多くの博識人のフィルターを通過してきており、インターネット上にある玉石混淆の情報に比べて質の高い情報になっている。
そういったものに何度も触れることでよりしっかりとした自分の考え方の土台をつくることができ、後に自分が得た情報を疑う視点を持つことにつながる。

インターネットは情報の宝庫

そうは言っても、新しい情報を得る手段の一つとしてインターネットは欠かせない。
情報環境が整い最新の情報を手に入れることができるようになったからこそ、情報の宝庫であるインターネットを自在に使いこなす能力は必要不可欠となった。

では、先生はどのようにインターネットを使いこなしているのだろうか。

”とりあえずTwitterとfacebookでメディアやジャーナリストのアカウントを複数フォローし、日常的にいろんなニュースに接するようにはしています。”

この言葉には二つのヒントが入っている。

一つはその情報源に直接あたった「一次情報」に触れることだ。情報と自分との間に人やメディアが入れば入るほど、事実から遠ざかり意図的な情報操作が加わることがある。
現場を見ているジャーナリストが発信する情報だからこそ価値がある。

二つ目は、多くの情報に触れることだ。
さまざまな情報を使って、自分の持っている情報を吟味することで、より質を高めることができる。


近い将来、「知」を探し出す能力がその人の「知」の優劣を分ける一つの大きな要因になる。
そして、これから先、インターネットは常に身近にある「第二の頭脳」として存在し続けることになる。
スマートフォンの普及だけでなく、macOSにSiriが、Windows10にConrtana(マイクロソフトにより開発されたインテリジェントパーソナルアシスタント。音声認識により声だけで検索やスケジュールの確認が可能)が標準装備されたことはその象徴と言えよう。
その能力を身に付けるためにも、インターネットの特性を理解したうえで、基礎となる十分な知識を若いうちから身に付けておかなければならない。

おわりに

情報環境が整い、情報を調べ尽くすことが難しい時代となった。
その中で、いかに正しい情報を汲み取れるかが問われている。
この時代を生き抜くために、改めて情報の読み取り方を見直す必要がある。
自分に認知バイアスが存在することを頭の片隅に入れておいたうえで、情報を読む。
その基礎的な知識となるものをしっかりと養うことを忘れてはならない。


取材に協力いただいた江下先生に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。

江下雅之

明治大学情報コミュニケーション学教授。
現在の研究テーマは、コミュニケーション行動の社会史的研究、「たまり場」における関係形成、サブカルチャの史的研究。
著書に『ネットワーク社会の深層構造』(中央公論新社・第16回テレコム社会科学賞受賞)などがある。

参考文献

(文責:新見友梨)

【研究者インタビュー】

▶ あなたは大丈夫?正しい情報を読み取る方法
(江下 雅之:明治大学情報コミュニケーション学専攻教授)

▶ パフォーマンスを大きく変える、ちょっとした”意識”の工夫
(大木 雄太:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 博士後期課程 体育科学専攻)


▶ インドネシアから見る”知られざる”イスラーム
(野中 葉:慶應義塾大学専任講師)

カテゴリ

応用科学

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