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2018/01/30

テクノロジーは人間の敵なのか?

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―AI技術が進むと、人間の職が失われる!?
―ロボットの自動化が進むと、労働者の仕事が取って代わられる!?

AI技術が目まぐるしく向上していることから、ロボットやAIと人間(労働者)の対立という構図で語られることが増えてきました。

背景には、イノベーションのスピードが上がり、テクノロジーが影響を及ぼす範囲が産業から社会、そして個々人へ移ってきていることにあります。
そのため、数年前から、イノベーションを手放しで喜んでもいられなくなってきています。

例えば、配車アプリのUBER(ウーバー)はタクシー業界にイノベーションを起こしました。
UBERは、一般の車を持っている人が(スキマ時間に)運転手になれること、使用者も簡単に配車&支払を行うことができるため、低コスト&スケーラビリティという特性を持っています。

その特性は、既存のタクシー業を破壊し、タクシー運転手の仕事を奪う恐れがあります。

はたしてロボットは人々の仕事を奪うのでしょうか?
はたして人工知能は人間にとってかわるのでしょうか?

テクノロジーと人間の関係性について、未来を見据えた視点から考察していきます。

  1. ロボットは仕事を奪うのか?
  2. 人工知能は仕事を奪うのか?

ロボットは仕事を奪うのか?

―ロボットに労働が奪われるのか?

二択で答えるのであれば、答えはYesです。
ロボットによる自動化が進むにつれ、今後単純労働は確実に減少します。

基本的に、人は便利な技術が出てくると手放せません。
(スマートフォン、スマートスピーカーが普及する中で、手紙を投函してメッセージを送るスタイルに戻れるひとは少ないはずです)
そのため、便利になる自動化は進んでいき、単純労働も減っていくのは明らかです。

しかし、先ほどの質問は、前提となっている部分から考える必要があります。
果たして、ロボットに労働が奪われることは悪いことなのでしょうか?

最初の質問は、あることが前提となって考えられています。
それは、「労働は人間にとって必要なものである」ということです。
言い換えれば、「労働をしなければ、お金が稼げなくなり、お金がないと生活ができない」状況が今後も続くということです。

しかしこれは、ビジネスを日常的に行っている「現在の感覚」であり、未来を見誤っている可能性があります。
前回までの連載の内容を踏まえ、現在の労働体系になった背景を考えてみます。

火や電気のなかった時代は、太陽の出ている時間しか労働することはできませんでした。
もちろん、その時に労働の対価で受け取ったお金で生活するという図式もありません。
こういった労働のシステムが成立していたのは、産業革命以降のこの300年間です。

さらに、人々の働く平均労働時間は、産業革命以降、テクノロジーの発展とともにどんどん短くなっています。
例えば、ドイツの週の労働時間は、1870年に67.6時間あったのに対し、2000年には39.0時間まで減っています。(M. Huberman, and C. Minns, Explor. Econ. Hist., 2007)

一方で、生活に目を向ければ、テクノロジー向上の恩恵によって確実に豊かになっています。
また、同じ性能のモノはどんどん安くなっていきます。
洗濯や掃除は家電により大幅に労力が減りました。
かつては数千万円もした機械やカメラ・ゲームは融合し、数万円でスマホとして手に入れることができるようになりました。
Googleの様に、コスト上のリターンが得られると企業が判断すれば、無料でサービスを提供することが可能となります。

テクノロジーの進歩は、労働者にとっての収入を減らす可能性があるのと同時に、消費者に対してのコスト削減というメリットももたらします。
「ロボットに仕事が奪われる」と同時に、「コストの少ない生活ができる」未来が来ることも見逃してはいけないのです。

産業革命以降、労働時間は減っている

人工知能は仕事を奪うのか?

”シンギュラリティ(技術的特異点)”という言葉がよく聞かれるようになりました。
シンギュラリティとは人工知能が人類の知性を超えるポイントを指し、レイ・カーツワイルはこれが2045年にやってくると主張しました。
「人工知能は人間を滅ぼす」「人間は終わりだ」という話も耳にします。

―人工知能は、仕事を奪うのでしょうか?
―人工知能は、本当に人間にとって代わるのでしょうか?

仕事を奪うか否かについては、総務省発行の平成28年版情報通信白書で紹介されている有識者の意見が、一つの答えを示しています。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/n4300000.pdf

①技術革新に伴って、それに関連する雇用が失われるのは時代の常で今に始まったことではない。

②例えば、自動車の発明により、馬車の御者などの雇用は失われたが、新たに自動車の製造や運転手などの雇用が産まれた。
これは技術の進展に一般的な問題であり、AIだけを特別視するのは冷静さを欠いているように感じる。
失われる雇用よりも、新たな雇用をどう創出するかを考えるべき。産業革命を考えても、技術の発展を無理やり止めるのは不可能である。

③(かつての技術革新との違いに関して)AI(人工知能)と人間の共同作業が促進される仕組みとなり得る。
そのうえで、AI(人工知能)と人間の相互の信頼関係のもとでシステムそのものが自律性を持つ点がこれまでの技術革新との違いになる

もちろん、現在の仕事に関する雇用が減る可能性はありますが、
その分新たな仕事の雇用が生まれていく可能性は高く、仕事を奪っていくという視点は必ずしも正しくありません。
https://wired.jp/2015/09/17/ai-and-robots-give-us-new-jobs/

人工知能は、人間にとって代わる、という議論には、ロボットの話と同様に抜け落ちている視点があります。
「そもそも人間とは何なのか」という視点です。

私たちは、人間のことを思っているよりも知りません。
脳という人間を人間たらしめる機能でさえも、まるでその構造を再現できていません。
私たちは、ブラックボックスを残したこの生命体を、ざっくりと「人間」と呼んでいるにすぎないのです。

一方、『未来予測の技法』によれば、テクノロジーの本質は「人間の機能の拡張」です。
人間の手足の拡張として道具が生まれ、
人間の動力の拡張として蒸気や電力があり、
知性の拡張としてコンピュータやインターネットがあります。

その本質を考えたとき、人工知能と人間を対立したものとして捉えることは本質からずれています。
むしろ、テクノロジーの進化によって、「人間の機械化」と「機械の人間化」が同時に進んでいきます。
人間にとって代わるというよりは、人間と融合していくという見方をしていく必要があるのです。

【まとめ】

  • 長期的な視野で物事を捉えると、現在の見え方が変わってくる
  • 自動化の技術は、労働・収入の削減と共に生活コストの低下ももたらす
  • テクノロジーの本質は「人間の機能の拡張」であり、人と共に歩むものである
未来予測の技法

時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法

著者:佐藤航陽
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN:978-4-7993-2211-6

Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4799322117/
D21サイト:http://www.d21.co.jp/shop/isbn9784799322117


【連載一覧】

<第1回 佐藤航陽流「未来予測の技法」>
<第2回 システムを「原理」から考える~イノベーションの本質とは~>
<第3回 テクノロジーは人間の敵なのか?>
<第4回 合理化の罠>
<第5回 来たるべきタイミングを図る>

カテゴリ

応用科学

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